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酵素反応速度曲線のフィッティング
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酵素反応速度曲線のフィッティング

GraphPad Prismでは簡単にモデルのデータへのフィットが行えます。ここではGraphPad Prismの操作法に留まらず、非線形回帰の原理(モデルの比較、外れ値の特定、グローバルフィッティング、等を含む)についても考察します。

非線形回帰チュートリアルにて、「非線形回帰とは:非線形回帰に関してよくある誤解」「 非線形回帰分析を行うために必要なこと」「GraphPad Prismでの非線形回帰の留意点」を紹介しています。非線形回帰に関してよくある誤解など、初心者の方にも分かりやすい内容となっています。

線形/非線形回帰の違い

線形/非線形回帰のゴール

直線は傾きとY切片を与えることによって規定されます。線形回帰(linear regression)の目的とするところは、傾きとY切片の値を調整し、直線がデータに最も良くフィットするようにすることです。非線形回帰(nonlinear regression)は線形回帰に比べより一般的であり、データを任意の数式(Yの値を規定するXの関数)とパラメータにフィットさせます。具体的には曲線がデータに最もフィットするようなパラメータ値を見つけ出します。

線形/非線形回帰の演算ロジック

線形回帰、非線形回帰は共に、直線、あるいは曲線が最もデータにフィットするようなパラメータ値(線形回帰の場合は傾きとY切片)を見つけ出します。より正確に言うと、そのゴールはデータ点から直線/曲線への垂直距離(Y軸方向に沿った距離)の2乗和を最小化することです。

線形回帰は代数演算(多くの統計書に記述されています)を駆使してこのゴールを達成します。データを投入すれば答が返ってきます。あいまいさは全くなく、その気になれば手計算でも行うことができます。

非線形回帰の場合には微積分や行列演算を駆使した反復演算手法が用いられます。その際、パラメータごとに初期推定値を指定する必要があります。

GraphPad Prismによる酵素反応速度論曲線のフィット

Step-1. データテーブルの作成

Welcomeダイアログ上で「XY」を選択、サンプルデータにあるEnzyme kineticsリストから Michaelis-Menten を選択します。

Step-2. データのチェック

サンプルデータは一部、操作法を説明したフローティングノートによって隠されているかも知れません。適宜移動するか縮小してください。反復データは3重になっています。一部データが欠落していますが問題はありません。

Step-3. グラフの表示

GraphPad Prismはグラフに対しデータテーブルと同じ名称が自動的につけられます。ナビゲーターのGraphsにある XY: Michaelis-Menten (nonlin. reg.) をクリックするとグラフが表示されます。

Step-4. 非線形回帰の選択

Analyzeボタンをクリックし、XY analysesのリストからNonlinear regression (Curve fit)を選択します。

GraphPad Prism_酵素反応速度論曲線_XY analyses - Nonlinear regression

Step-5. モデルの選択

Modelタブにある Enzyme Kinetics - Velocity as a function of substrate リスト下の Michaelis-Menten を選択し、OKをクリックします。

Step-6. グラフのチェック

曲線が追加されたグラフが生成されます。

グラフに平均値とエラーバーを追加する場合は、Format Graphダイアログから行います。グラフをダブルクリック、または Format GraphボタンをクリックしてFormat Graphダイアログを開きます。

Appearanceタブをクリックし、Style 項目の Appearance から Mean and Error を選択します。

Step-7. 結果のチェック

非線形回帰のゴールはパラメータの最適合値を求めることです。これらはテーブルの先頭に出力されます。しかしその精度が分からなければ、意味が本当に分かったとは言えません。これは標準誤差(Std. Error)と信頼区間(CI)として出力されます。

Step-8. 元に戻って繰り返し値を実行

メニューバーのAnalyzeボタンの右横にある Change analysis parametersボタン をクリックし、Parameters: Nonlinear Regressionダイアログを開き、分析パラメータの設定を行います。

Step-9. パラメーターの変更

Parameters: Nonlinear RegressionダイアログのDiagnosticsタブをクリックし、Are residuals clustered or heteroscedastic? 項目の Replicates testにチェックを入れOKボタンをクリックします。

Step-10. 結果のチェック

P値は小さな値となっています(0.013)。すなわちデータの曲線からのバラツキが繰り返しデータ間のバラツキから期待されるものに比べて大きいということです。このことは別のモデルによるフィットを検討した方が良いことを示唆しています。