PAMサイトの検索とgRNAの設計
CRISPR(Clusters of Regularly Spaced Interspersed Short Palindromic Repeats)-Cas9システムは、細菌においてウイルスなど遺伝的要素の侵入物を特異的に排除するよう進化した獲得免疫機構です。この機構を利用して、二本鎖DNAを切断してゲノム配列の任意の場所を削除・置換・挿入することができるようになりました。
大きな配列からgRNAの候補を検索し、それらをスコア化するにはオンラインのgRNAデザインツールを使用する必要があります。しかし、比較的小さな配列でゲノムターゲットが限定されている場合は、SnapGeneを使用してgRNAを設計することができます。
このチュートリアルでは、SnapGeneでPAMサイトの検索とgRNAの設計を行う方法をご紹介します。
1.【準備】DNA配列を入手する
任意の配列(500~700 bpぐらいの配列)を各自用意してください。本チュートリアルでは以下の配列を使用します。
PAMサイトの検索とgRNAの設計
SnapGeneにDNA配列をコピーします。SnapGeneの起動から配列のコピーまでは、SnapGeneラーニングの プラスミドマップを作成する:SnapGene (SnapGene Viewer)の起動 を参照してください。
すでにファイルがある場合は、SnapGene基本操作:3.ファイルを読み込むを参照し、ファイルを読み込み込んで下さい。
シークエンスタブを開き、Control+ F機能を使って “NGG” と入力し、PAMサイトを検索します。両鎖のすべてのPAMサイトがハイライトされます。なお、NGGは5′-NGG-3’の規則に一致するように定義されています。
フィーチャー機能を使って、実験に適した NGG をPAMサイトと表示してください。
PAMサイトの5’側にある20個のヌクレオチドを特定します。この20塩基がホーミング装置として働き、PAM siteの直前に位置する特異的DNA標的部位へCas9/gRNA複合体を動員します。
SnapGene プライマー機能やフィーチャー機能を使用して、これらの配列にラベルを付けます。
メニューバーの「プライマー」から「プライマーを追加」をクリックすると、任意のプライマーを追加することができます。
PAM配列から3塩基内側にあるターゲット配列がCas9切断部位です。必要に応じて、切断部位を登録します。
以上がSnapGeneを利用して行える機能になります。
なお、CRISPR-Cas9を使用する際に気にすべき事項として、オフターゲット作用があります。オフターゲット作用は、本来期待していない部位に挿入・欠損・変異が生じ、得られた表現型が損なわれてしまう現象です。
残念ながら、SnapGeneではCRISPR-Cas9システムの特異性を検証することはできません。ただ、CRISPR-Cas9システムのオフターゲット作用の頻度を予測することは困難です。また、対象配列の領域が決定している場合は、候補となるPAMサイトが限られており、CRISPR-Cas9システムの効率を検証することもできません。以上より、比較的小さな配列でゲノムターゲットが限定されている場合は、今回のような方法で行うことが現実的であると考えられています。
以上で、PAMサイトの検索とgRNAの設計を終わります。
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